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酪酸の成分、オレンジジュース程度と認識(産経新聞)

【SS元船長 最終弁論要旨】

 ピーター・ジェームス・ベスーン被告(45)に対する最終弁論要旨は以下の通り。

 ■公訴事実について

 起訴状記載の公訴事実のうち、威力業務妨害、器物損壊、艦船侵入、銃刀法違反については争いがない。しかし、傷害については、故意と因果関係、結果発生の有無、その程度について、合理的な疑いが残るもので争う。

 ■傷害の因果関係について

 被告が、ゴムボート上から、航行中の第2昭南丸の左舷側船橋部付近に向かって、酪酸入りのガラス瓶を圧縮空気式発射装置、ランチャーを使って発射し、これが左舷側船橋部付近壁面に当たって割れ、ガラス瓶内の酪酸が流出した。

 ガラス瓶の着弾場所から被害が発生したとされる場所までの直線距離は約9メートル、高さにして約7メートルの距離だった。

 第2昭南丸に向かって吹いてくる風速は毎秒6.2メートルで、これは、気象庁による風力階級では、「和風」と区分され、陸上では「砂ぼこりが立ち、紙片が舞う。小枝が動く」程度の風だ。海況によっては、上甲板上で波しぶきをかぶることはあるが、事件当時は大きな波はなく、波しぶきを体に浴びる状況ではなかった。被害者は、フェイスカバーの付いたヘルメットを着用して、海面から約120センチと、かなり海面に近い場所にいたが、身体にもヘルメットにも海水を浴びていない。

 因果関係と想定されるのは、ガラス瓶には純度の高い酪酸が入っており、それが着弾場所で激突して破裂し、瓶の中の酪酸が飛沫(ひまつ)となって左舷側後部の上甲板上にまで拡散し、フェイスカバーを鼻のあたりまで下ろした状態でヘルメットを着用していた被害者の顔面に付着した、ということ。

 酪酸は人体に有害であるとされるが、希釈化された場合の危険性については、証拠となっている文献上、何も記載されていない。ガラス瓶破片の鑑定書においても、酪酸の付着が認められたことのみが記載されており、濃度や純度などについては言及されていない。被告は、今回のガラス瓶と同種のものを取り扱った際に、誤って素手で20〜50ミリリットル程度の酪酸に触れたことがあったが、数分後に手を洗ったとき、特に痛みや炎症などの症状は引き起こさなかった。今回のガラス瓶内の酪酸も純度が低いか、相当希釈されていた可能性がある。

 製品としての酪酸は、油状の液体で、ある程度の粘性を有している。仮に、ガラス瓶が激突して破裂したとしても、風速が「和風」の状況では、酪酸が飛沫となって広範囲に飛散した可能性には疑問の余地がある。

 乗組員は「2枚のガラスににおいのする液体が付いて流れていました」などと述べている。ガラス瓶内の酪酸は粘性を持った液体だったことが推察される。

 また、ガラス瓶の破片は船橋甲板左舷側通路から回収されていて、実況見分調書添付の写真では、緑色の床がまだらに変色している。まだら状に変色したのが「船首尾方向に長さ1.7メートル、幅1.2メートル」であるということからすれば、相当量の酪酸がこぼれたことがうかがわれる。仮に、酪酸が飛沫化して船橋甲板左舷側通路を飛び越えて落下したとしてもかなり少量であったはずである。

 被害者の男性は、受傷時、顔に何かかかったという感じはしなかったと証言し、また、本件発生時の前後ごろ、上方からガラスの破片のようなものが降ってきてそれを浴びたり、液体が降ってきてそれを浴びたりしたとか、霧のようなものが上方から降ってきた感触はなかったとし、シャワー室に向かうまでの間に、上甲板上にガラスの破片のようなものが散らばっているとか、足でじゃりじゃりとしたものを踏んだ感触はなかったと証言している。

 一方、被害者よりも10メートル程度船尾側の上甲板上にいた乗組員も、事件発生時の前後にガラスの破片のようなものが身体に触れたという記憶はなく、上方から水が降ってきたような感覚は認識しておらず、顔に痛みを感じてから船内に入るまで上甲板上を船首方向に歩いたが、床にガラス片のようなものが落ちていた感触はなかったと証言している。

 これらの証言からすると、左舷側上甲板上に液体やガラスの破片のようなものが落下した事実は認められない。ガラス片が採取され、また変色の痕が認められたのは船橋甲板左舷側通路のみで、左舷側上甲板上からはガラス片や変色その他の異変が認められない。

 なお、シャワー室で洗顔した後、酪酸のにおいを消すために中和剤をまいた乗組員は、「左舷側の着弾したあたり、つまりブリッジ周辺一帯で、上甲板にはまいていない」と証言しており、左舷側上甲板上に酪酸は付着していなかった。

 被害者の男性は、事件時、ヘルメットのフェイスカバーを鼻のあたりまで下ろしていたが、これまでの経験上、フェイスカバーを下ろしている状態で海水がヘルメットの中に霧状になって入ってきたことはないと証言している。フェイスカバーを下ろしていれば、ヘルメット内部に飛散した液体が入り込むのは考えにくい。

 被害者の男性は、ランチャーが発射されてから痛みを感じるまで5秒以内程度で、被告がランチャーを構えたのを見て「危ないと思いました」などと証言している。しかしながら、身をかがめたり、ランチャーを凝視(ぎょうし)して動向を注視したりせず、身構えることなく漫然と5秒以上もブリッジの方を見上げて立っていたことになり、危険に遭遇したと感じる者としては不自然。証言はにわかに信じがたい。

 これに対して、別の乗組員は、ランチャー発射直前「反射的に身を隠していました」と供述しており、自然かつ合理的な反応で危険回避したと述べている。

 酪酸に関する「国際化学物質安全性カード」などは、身体への暴露として「吸入、皮膚、目、摂取」を挙げる。しかし、酪酸を浴びたと供述した者のうち、誰も「吸入」による症状を訴えていない。船医も、吸入によって生じる症状を診断書に記載していない。

 被害者の男性らは、着用していたカッパに酪酸の悪臭が付着したために翌日までに廃棄してしまった。酪酸が付着したカッパは、シー・シェパードによる酪酸の撃ち込みを立証する極めて重要な証拠で、漫然(まんぜん)と廃棄したのは極めて不自然・不合理な行動だ。

 ヘルメットについても、帰国の途についた以上、防護用のヘルメット着用の必要性はなくなっていたはずで、酪酸の飛沫を浴びて傷害の結果が生じたと主張するのなら、証拠として、着用していたヘルメットを洗わずに保全する措置をとっておいたはずである。

 化学熱傷を起こす物質は酪酸以外にも多くの種類がある。酪酸対策として危険有害性のアルカリ性中和剤が準備されていた可能性も払拭(ふっしょく)できない。

 ■傷害の結果について

 被害者が船医の診断を受けたのは、受傷2日後。全治日数を診断するには、実際の経過観察をもって結論を出すことが適切である。刑事責任が追及されうる場合に、被害者がどの程度の受傷をしたかは、量刑に重要な影響を及ぼす事実であり、一般的・抽象的な予測的診断を根拠にすることは著しく不適切である。

 ■故意について

 被告が、第2昭南丸の左舷側をボートで併走して、ランチャーを発射するとき、被害者の男性が受傷した場所付近に人がいることは認識していなかった。

 被告は、ランチャーを使用してガラス瓶を撃ち込む際、あらかじめ人のいない左舷側船橋部付近を狙っており、ガラス瓶発射行為は人の身体に向けられたものではない。

 被告の酪酸に関する知識は、人体に対して害を与えるものではなく、成分は、酸性度のオレンジジュースと同程度というものであった。人体に危害が生じるとの認識は全くなかった。

 ■情状について

 日本鯨類研究所が南極海で実施している調査捕鯨に付いて、反対する意見が国際社会において有力に存在している。

 被告は、捕殺を伴う調査捕鯨が国際捕鯨取締条約に違反するものと考えて、平成21年7月ごろより、妨害に参加した。第2昭南丸は、妨害行為を防止することが主な任務であり、海水を発射して、接近を防止するものだった。

 被告は第2昭南丸がスティーブ・アーウィン号に接近することを阻止することを目的としていたので、第2昭南丸左舷側船橋上部甲板の人がいないところを狙ってランチャーからガラス瓶を発射した。第2昭南丸に侵入することを決意し、実行したのは、被告の乗船するアディ・ギル号が第2昭南丸と衝突して沈没した事件について、第2昭南丸の船長に責任を問うことであった。直接相手方とあって話がしたいという動機は十分に理解しうるもので、斟酌されるべきである。

 持ち込んだナイフで乗組員に危害を加える意思は全くなかった。なお、小型ボートで航行する場合、ロープが身体に巻き付いたりした場合は命にかかわるのでナイフを携帯しているのが一般的であることから、ナイフ所持が違法とは思っていなかった。

 被告は、防護ネットをナイフで切断したが、第2昭南丸を所有する共同船舶に、被害金額を弁償した。

 第2昭南丸が東京に到着した後、海上保安官に対してナイフを差し出した。海上保安官に対して自ら申告した時点において、ナイフを所持していることは捜査機関に発覚しておらず、銃刀法違反については自首が成立すると思料する。

 被告は、自らの正義感でシー・シェパードの活動に参加したが、事件発生に至り、今後は他人を傷つけるような可能性のある活動には参加しない旨を表明している。被告に前科はなく、今回初めて身柄を拘束された。逮捕されて以来、約3カ月にわたって拘束されており、家族らと面会できず、その辛さは十分味にしみている。

 被告は、管理学の修士号などを有し、石油開発会社の勤務経験もある。母国には妻子もおり、今後、静かに暮らしていくつもりだ。

 ■結論

 傷害罪については、成立に合理的疑いの余地があると思料するが、その他の公訴事実についてはすべて認めており、被告には十分な反省が見られ、再犯の恐れもないといえる。今回に限り、母国での再起の機会を与えることが、更生の観点からも相当で、執行猶予付き判決を求める。

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